ANANDASIA > オリエンタルビューティー No.1 古の月宮 中村太一さん

interview No.1 古の月宮 inishie no tukimiya
滋賀・長浜にある美容院「古の月宮」 古い納屋を改装し美しいシノワズリの世界を展開する 中国のランタンがぼんやりと月のように浮かぶ幻想的な風景

 

たゆたう水辺の景観が美しい滋賀・長浜にある美容院「古の月宮」 築75年の古い納屋を丁寧に改装し、美しいシノワズリの世界を展開する 中国ランタンがぼんやりと月のように浮かぶ幻想的な風景 古民家の荒壁の造形そのままに本来の素材のよさを存分に残した空間は心地よく、大地の胎内に包まれたような安心感がある

 

 

 

-古来、髪を切る行為は「髪削」といい、吉日を選んで行われる「儀式」でした。静謐な空間で髪を洗って切り整えてもらうと、不思議と気持ちも落ち着き心がリセットされました。忙しい毎日を忘れられるひととき-そんな安らぎの美容室「古の月宮」を営んでいる中村太一さんにお話を伺いました。

 

中村太一 なかむらたいち 古の月宮 美容師

-美容室をなぜ長浜の地で営まれるのですか

 

もともと器用で子供のころは料理人になりたかったんです。高校を出て自然と美容師の道に入りました。京都で20年修行し、2017年8月に故郷長浜に戻り独立しました。もともと古からあるものに関心があったのですが、ある時、故郷に戻った際に、改めて長浜の自然の豊かさ、時間の流れ、すべてがゆるりと心地よく、ここしかないと感じたんです。祖父が建てた築75年の納屋をもう一度よみがえらせたいとも思いました。

 

 

-元の古民家のパーツと中国の古い建材がうまく調和していますね

 

モダンさを求めるというより、もっと根っこにある深いものを掘り下げたかった。起源・ルーツといったものに惹かれるんです。中国家具は当時目黒にあったインテリアショップで探しました。中国椅子はもともと赤い塗料でつやのあるニスが塗られていましたが、すべて削って元の素材の美しさを出しました。自然の飾らない美しさ、朽ちてゆく過程の美しさが魅力的だと思うんです。

 

 

 

 

 

 

-古の月宮と名付けたのはなぜですか

 

人の生体バランスは「月」に左右されています。日本も昔は月のサイクルである陰陽暦を使っていましたが、自然のサイクルにとても近いんです。人も自然の一部なので体や心の調子は月のリズムに影響されています。でも、近くに自然を感じづらくなった現在社会ではなかなかそのリズムを実感しにくい。知らないうちに体や心のリズムを崩しているのかもしれません。そこで、うちでは月のサイクルにあわせたヘアケアを提案しています。天然植物由来のシャンプー、コンディショナー、スタイリング剤を用いて、時にはたっぷりと髪に栄養をチャージし、時には髪を休ませ余分なものをデトックスさせる。自然の香りをまとうことで自身の気持ちもリフレッシュまたはリラックスさせることができます。そうやって自然のサイクルに心身を戻すお手伝いができればいいなと思います。

 

 

 

 

 

-最近興味のあることはなんですか

 

中国茶を習い始めました。ご近所に本格的に中国茶に取り組まれているギャラリーがありまして毎月茶会が開かれるんです。滋賀の陶芸家の方で中国茶に造詣の深い方もいらっしゃって趣のある中国茶器を制作されてますし、いま、台湾や中国でも日本の作家さんの茶器が一大ブームになっているみたいです。

中国茶はたいへん奥深いですし、格式ばったところがなく自由にふるまえるところが好きです。自然体というか。いま中国茶がちょっとしたブームですが、このブームが去った後のものの在り方というのも好きです。取り上げられる前と後とでそのもののありようが問われ、もまれた後の成熟した様も趣があると思います。

 

 

-今後の予定を教えてください

 

長浜に居を移して一年が経ち、少しずつ生業は落ち着いてきました。来ていただいたお客様にひとりひとり向き合い丁寧な仕事をすることが第一ですが、空いた時間で少しずつ庭を造り、畑もしていきたいと思っています。そうやって土に触れることでより自然を感じてみたい。そうすることで、お客様に自然のサイクルを還元していきたいと思います。

 

 

 

 

古の月宮の看板-「古」の上の横線は長く、「月」は尻つぼみに書かれています。古の長い線は「時間」を、月の形は「満ち欠け」を表現しています。

 

琵琶湖畔、水のたゆたう美しい土地。稲刈りの終わった少しばかりさみしい田畑の間をぬって豊富な水をたたえた川が流れていきます。たわわに実った柿・熟す前のどんぐりが自生する庭に茶樹を植え、畑をしながら髪を切る人。列車にゆられて訪ねた長浜の土地は、時の流れがゆるやかでどこかに迷い込んだよう。髪だけでなく心も洗い清められ安らかな気持ちで帰途につきました。

 

 

古の月宮

 

526-0132 滋賀県長浜市香花寺町291

www.facebook.com/InisienoTsukimiya